「決算期を避けて動くべき」という話に、法律の決まりや公的な裏付けはありません。言えるのは、申告や届出の期限から忙しくなりやすい時期の見当がつくことと、実際の忙しさは会社ごとに違うことです。転職の時期は、今の会社の山、応募先の事情、自分の準備の三つを重ねて決めるのが現実的です。
経理以外の仕事から移る人は、今の会社の決算月を気にする必要はありません。見るのは応募先の決算月と、退職のルール、雇用保険の章です。
期限から読む忙しさ
下の表は、3月決算で延長の特例を使わない会社を例に、期限の事実から考えられることをまとめたものです。採用が活発になる月を示す公的なデータは、調査では確認していません。会計事務所の山は顧問先の決算月で変わるので、会計事務所と事業会社の違いの表を見てください。
| 時期 | 期限から分かること | 転職で考えたい点 |
|---|---|---|
| 4〜5月 | 法人税と消費税の申告は原則5月末12 | 面接の日程や引き継ぎの時間を取りにくい場合がある |
| 6〜7月 | 年度更新と算定基礎届は7月10日まで34 | 担当によって忙しさが大きく違う |
| 8〜9月 | ここで挙げた法定の期限は少ない。上場会社の四半期決算短信5は原則として四半期終了後45日以内6 | 情報収集を始める余裕を作りやすい可能性がある |
| 10〜11月 | 年末調整の準備7。上場会社は半期報告書8 | 年内の退職なら引き継ぎの範囲を早めに整理する |
| 12〜2月 | 年末調整7、法定調書。令和8年分は令和9年2月1日9 | 給与や税の担当は動きにくい時期になりやすい |
| 3月 | 事業年度の終了と決算の開始1 | 期末直前の退職は引き継ぎの調整が要る |
決算月が違えば、この表はそのままずれます。法人税の期限は事業年度の終了を基準にしているため1、12月決算の会社なら申告の山は2月から3月です。延長の特例を使う会社もあるので10、実際の日程は社内の予定で確かめてください。
年の山とは別に、毎月の締めの週も動きにくい時期です。面談や面接の日程は、自分の締めの日程を先に手帳に書いたうえで調整しましょう。オンラインで面接を受けられるかを確かめると、調整が楽になる場合があります。
税理士試験を受ける人は、別の暦も重ねます。第76回の試験は令和8年8月4日から6日で、合格発表の予定日は11月27日です11。第76回からは全ての受験者に科目ごとの得点が通知されます12。発表前に動くなら、面談で発表の日付を伝えます。入社の時期は、次の試験までの学習と応募先の山が重ならないかを見て決めましょう。
応募先の側でも同じことが起こります。決算の直前は採用の面接に時間を割きにくいかもしれませんし、反対に、決算を見据えて人を早く増やしたい会社もあるでしょう。どちらが多いかを示す資料はないため、「この月なら有利」とは言えません。応募先の決算月、今の会社の山、家庭の予定を同じ年の予定表に書くと、動ける時期が見えてきます。
退職の法律のルール
雇用の期間を定めていない場合、働く人はいつでも解約を申し入れることができ、申入れの日から2週間で雇用は終わります13。
契約社員など期間の定めがある雇用では考え方が異なります。やむを得ない事由があれば直ちに解除できますが、その事由が一方の過失によるときは損害賠償の責任を負います14。期間が1年を超える契約では、一定の場合を除き、初日から1年を経過した後は申し出ていつでも退職できます15。
就業規則に、退職を申し出る時期の定めがある会社もあります。法律の期間だけでなく、規則の内容と引き継ぎに必要な期間を確認して、余裕を持って話を始めましょう。規則と民法の関係や、退職をめぐるトラブルの判断は個別の事情によるため、労働局の相談窓口に確認してください。
雇用保険と退職日
次の仕事が決まる前に辞める場合は、雇用保険の基本手当の扱いも見ておきましょう。求職の申込み以後、失業の日が通算7日に満たない間は支給されません16。これを待期といいます。
正当な理由のない自己都合退職には、待期の後に支給されない期間があり、法律では1か月以上3か月以内で所長が定めるとされています17。
| 場合 | 給付制限 |
|---|---|
| 令和7年4月1日以降に自己都合で退職 | 原則1か月18 |
| 令和7年3月31日以前に自己都合で退職 | 原則2か月18 |
| 退職日から遡って5年間に2回以上、正当な理由なく自己都合で退職し受給資格決定を受けた | 3か月19 |
| 自己の責めに帰すべき重大な理由で解雇された | 3か月19 |
| 令和7年4月以降に対象の教育訓練等を受けた、または受けている | 解除される19 |
自分がどれに当たるか、どの教育訓練が対象か、受験に専念する場合の扱いはどうなるかは、ハローワークで確認してください。退職日を決める前に調べておくと、次の入社日までの生活の見通しを立てやすくなります。
次にすること
まず今の会社と応募先の決算月を調べ、表の時期を読み替えます。月ごとの仕事は経理の年間スケジュールにまとめました。次に就業規則で退職の定めを確認し、自分の担当業務の引き継ぎに何週間かかるかを見積もります。経理以外から移る人は、応募先の決算月を調べ、面接と入社の時期に重ならないかを見ます。簿記を勉強中なら、受験の予定と応募の時期も並べて考えましょう。
経理の引き継ぎでは、手順書のほか、月と年の期限の一覧、進行中の処理、社外の窓口、システムの権限を整理しておくと進めやすくなります。1回の締めを後任と一緒に通せる日程が取れるか、という目で見積もるのも一つの方法です。担当者が少ない会社では、後任の採用から始まることがあります。後任が決まってからの週数だけでなく、後任が決まるまでの期間も考えて見積もります。
求人倍率などの統計は、1か月の数字では時期の判断に使えません。全体の傾向は有効求人倍率の記事で確認できます。
内定が出たら、入社日から逆算して退職の申し出の日を決めましょう。退職時には源泉徴収票を受け取ってください。受給者への交付は令和9年以後も引き続き必要で20、次の勤務先の手続きで求められることがあります。
出典
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e-Gov法令検索「法人税法 第74条」 確認日 2026-10-31 ↩ ↩2 ↩3
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国税庁「No.6601 申告と納税」 確認日 2026-10-31 ↩
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厚生労働省「労働保険料の申告・納付」 確認日 2026-10-31 ↩
-
日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」 確認日 2026-10-31 ↩
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金融庁「企業会計審議会 監査部会 事務局資料(2023年9月4日)」 確認日 2026-10-31 ↩
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東京証券取引所「会社情報適時開示ガイドブック(2026年7月)」 確認日 2026-10-31 ↩
-
国税庁「令和8年分 年末調整のしかた(手順などの説明)」 確認日 2026-10-31 ↩ ↩2
-
e-Gov法令検索「金融商品取引法 第24条の5」 確認日 2026-10-31 ↩
-
国税庁「令和8年分 年末調整についてのお知らせ(リーフレット)」 確認日 2026-10-31 ↩
-
e-Gov法令検索「法人税法 第75条の2」 確認日 2026-10-31 ↩
-
国税庁「令和8年度(第76回)税理士試験公告」 確認日 2026-10-31 ↩
-
国税庁「令和8年度(第76回)税理士試験結果の発表方法の変更について」 確認日 2026-10-31 ↩
-
e-Gov法令検索「民法 第627条」 確認日 2026-10-31 ↩
-
e-Gov法令検索「民法 第628条」 確認日 2026-10-31 ↩
-
e-Gov法令検索「労働基準法 附則第137条」 確認日 2026-10-31 ↩
-
e-Gov法令検索「雇用保険法 第21条」 確認日 2026-10-31 ↩
-
e-Gov法令検索「雇用保険法 第33条」 確認日 2026-10-31 ↩
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厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」 確認日 2026-10-31 ↩ ↩2
-
群馬労働局・ハローワーク リーフレット 確認日 2026-10-31 ↩ ↩2 ↩3
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国税庁「No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等」 確認日 2026-10-31 ↩