月次決算は、1か月分の取引を締めて試算表にまとめ、経営の判断に使える形で報告する手続きです。流れは、資料を集める、仕訳する、残高を合わせる、調整する、確かめて報告する、の5段階で考えると整理できます。締め日や報告日は一般に会社ごとに決めるものですが、途中で扱う請求書の確認や保存には法令のルールがかかわります。
月次決算の5段階
試算表とは、勘定科目ごとの合計や残高を一覧にした表です。仕訳は、取引を勘定科目に分けて帳簿へ記録する作業を指します。
締め日は会社ごとに決まりますが、この作業は月末の締めのあとに集中します。何日までに締めるかで、月の中の忙しい時期が決まります。
| 段階 | 主な作業 | 確かめること |
|---|---|---|
| 資料を集める | 請求書、領収書、入出金の明細、経費精算を回収する | その月の取引にもれがないか |
| 仕訳する | 売上、仕入、経費、給与を記録する | 勘定科目、税の区分、計上する月 |
| 残高を合わせる | 預金、現金、売掛金、買掛金を照合する | 帳簿と明細が一致するか |
| 調整する | 減価償却費の月割り、未払費用や前払費用、在庫を計上する | 月ごとの損益が実態に近いか |
| 確かめて報告する | 試算表を作り、前月や予算と比べる | 大きな増減の理由を説明できるか |
作業が止まりやすいのは最初の段階です。他部署から請求書や経費精算が遅れて届くと、後の工程がすべて後ろへずれます。そのため、提出の締め切りを社内へ早めに知らせ、未提出の分を一覧で追いかける進め方が一般的です。
次に手間がかかりやすいのは、計上する月の判断です。請求書の日付や入金の日ではなく、売上は商品やサービスを提供した月に、費用は発生した月に記録するのが基本です。たとえば月末に納品された品物の請求書が翌月に届いたら、買掛金や未払金を使って納品のあった月に計上します。この考え方が分かると、「調整する」の段階で何をしているのかが見えてきます。
残高が合わないときは、金額の大きな差から順に調べます。入金と売掛金の照合もれ、二重の入力、日付の誤りが、確認の出発点です。内容が決まらない取引を仮の科目へ入れた場合は、一覧にして翌月へ持ち越さないように整理します。
報告の段階で問われるのは、数字そのものより増減の理由です。売上が伸びたのか、費用の計上時期がずれただけなのかを説明できると、試算表は経営の判断に使える資料になります。
締めを早める工夫も、経理の大切な仕事です。提出の期限を前倒しする、見積もりの金額で先に計上して後で差額を直す、確認の手順を固定する、といった方法が一般的です。
ここから先は、請求書を扱う実務の話です。経理が未経験の人は、年度の決算との違いまで読み飛ばしてもかまいません。
請求書の確認
仕入れにかかった消費税を売上の消費税から差し引くことを、仕入税額控除といいます。インボイス制度の下では、一定の事項を記載した帳簿と適格請求書等の保存が、この控除の要件です1。
適格請求書を交付できるのは、税務署長の登録を受けた事業者に限られます1。法人番号を持つ課税事業者の登録番号は「T+法人番号」の形です1。受け取った請求書では、登録番号の有無を確かめて税の区分を決めます。
登録のない相手からの仕入れには、一定割合を控除できる経過措置があります。割合は仕入れの時期で変わるので、会計ソフトの設定と手順書が新しい割合になっているかを確認してください。
| 時期 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 令和8年10月1日から | 70%2 |
| 令和10年10月1日から | 50%2 |
| 令和12年10月1日から | 30%2 |
| 令和13年10月1日から | 控除不可2 |
一の相手からの課税仕入れの合計が、税込みで年または事業年度に1億円を超えると、超えた部分にはこの措置を使えません3。令和8年10月1日以後に開始する課税期間からの適用で、改正前は10億円でした3。
電子データの保存
メールやクラウドで受け取った請求書は、紙とは扱いが違います。注文書、契約書、領収書などの情報を電磁的方式で授受する取引を電子取引といい4、法人はそのデータを保存しなければなりません5。データを印刷した紙で保存する措置は廃止されています6。
原則のルールは、改ざんを防ぐ措置、ディスプレイやプリンタなどの備付け、日付・金額・取引先で探せる検索機能の3つです7。改ざん防止には、タイムスタンプのほか、訂正や削除の履歴が残るシステム、事務処理規程の策定と運用などの方法があります8。
基準期間の売上高が5,000万円以下の場合などは、税務調査でのダウンロードの求めに応じられれば検索機能の要件が不要です7。原則のルールに対応できなかったことに相当の理由があると税務署長が認め、かつ税務調査でデータのダウンロードと印刷した書面の提示に応じられる場合の猶予措置もあり、事前の届出は要りません7。これらは令和6年11月の資料に基づく説明です。令和8年7月の一問一答に令和8年度の改正で電子取引の扱いが変わったとの記載は見当たりませんでしたが、改正の有無を特定したものではありません6。自社の扱いは国税庁の最新の資料か税理士に確認してください。
年度の決算との違い
月次決算の積み重ねが、年度の決算の土台になります。毎月の残高が合っていれば、期末に見直す範囲を狭められるためです。ただし目的と期限は異なります。
| 項目 | 月次決算 | 年度の決算 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 社内の経営判断 | 株主への報告と税の申告 |
| 主な読み手 | 経営者や各部門 | 株主、税務署など |
| 期限 | 一般に社内で決める | 法人税の申告は事業年度終了の日の翌日から2か月以内9 |
| 承認 | 社内の手順による | 取締役会設置会社の計算書類は、定時株主総会の承認が原則10。会計監査人設置会社には報告で足りる場合がある11 |
月の中で動かせない期限の代表は、給与などから差し引いた源泉所得税の納付です。支払った月の翌月10日までが原則で12、締めの作業と時期が重なりやすくなります。土日祝に当たる月は翌日が納期限です13。
次にすること
経理が未経験の人は、求人の仕事内容を読み、5段階のどれに当たるかを見ましょう。「伝票入力」「請求書の処理」は資料や仕訳の段階です。「月次決算」とだけ書かれていれば、入力までなのか、残高の照合や報告まで含むのかを面接で聞きます。あわせて「毎月の締めは何日か」「その時期の残業はどのくらいか」も確かめると、働き方を見通せます。入社後の様子は未経験の最初の3か月で説明しています。
今の勤務先で経理を担当している人は、自分の担当を5段階に当てはめて書き出してみてください。まだ担当していない段階は、次に覚える範囲であると同時に、職務経歴書で書き分ける範囲でもあります。会計事務所で月次の確認を担当してきた人は、資料の回収や社内への依頼が、事業会社で増える部分になります。
出典
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国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」 確認日 2026-10-31 ↩ ↩2 ↩3
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国税庁「インボイス制度に関するお知らせ 法人の方へ(令和8年9月)」 確認日 2026-10-31 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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国税庁「令和8年度税制改正特集(インボイス制度特設サイト)」 確認日 2026-10-31 ↩ ↩2
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e-Gov法令検索「電子帳簿保存法 第2条」 確認日 2026-10-31 ↩
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e-Gov法令検索「電子帳簿保存法 第7条」 確認日 2026-10-31 ↩
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国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和8年7月)」 確認日 2026-10-31 ↩ ↩2
-
国税庁「電子取引データを適切に保存できていますか?(令和6年11月)」 確認日 2026-10-31 ↩ ↩2 ↩3
-
国税庁「電子取引データ保存要件チェックシート(令和6年11月)」 確認日 2026-10-31 ↩
-
e-Gov法令検索「法人税法 第74条」 確認日 2026-10-31 ↩
-
e-Gov法令検索「会社法 第438条」 確認日 2026-10-31 ↩
-
e-Gov法令検索「会社法 第439条」 確認日 2026-10-31 ↩
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国税庁「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」 確認日 2026-10-31 ↩
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国税庁「主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日」 確認日 2026-10-31 ↩