未経験で経理に入ったら、最初の3か月の目標は全部を覚えることではなく、毎月の流れを一周することです。経理の仕事は月単位でくり返すため、一度通して経験すると、それぞれの作業の意味が見えてきます。
経理事務は、入職に特に学歴や資格は必要とされない一方で、中途採用では決算や財務の業務経験が求められる傾向があります1。入社後に積んだ経験は、そのまま次の経歴になります。ここでの説明は一般的な目安で、進み方は会社の規模、担当の分け方、指導の体制によって変わります。
3か月の目安
| 時期 | 主に覚えること | 目指す状態 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 事業の内容、勘定科目、請求書と領収書の流れ、会計ソフトの操作 | 手順書を見ながら入力できる |
| 2か月目 | 締め日、入金の消し込み、支払の準備、残高の確認 | 前月と違う点に気づき質問できる |
| 3か月目 | 月次決算の全体像、他部署への依頼の仕方 | 担当の範囲を進め、確認を受けられる |
消し込みとは、入金や支払と売掛金や買掛金を突き合わせ、残高を消していく作業です。勘定科目は、取引の内容を分類する名前を指します。
速さよりも、正しい順番で進められることを先に目指しましょう。入力の速さは慣れで変わりますが、手順の理解は後から補うほうが手間がかかります。
つまずきやすい点も、先に知っておくと落ち着いて向き合えます。簿記の勉強で覚えた勘定科目と、会社で使う科目の名前や分け方が違うのは、よくあることです。同じ文房具代でも消耗品費にするか事務用品費にするかは社内の決まりによるので、過去の仕訳を見て確かめましょう。
請求書の日付と計上する月が違う取引にも戸惑いやすいところです。取引が発生した月に記録するという基本を、実際の書類を見ながら覚えていきます。表計算ソフトでの照合も経理では頻繁に使うため、教わった関数や手順は書き留めておくと、次の月から自分で進められます。
仕訳の入力を間違えること自体は、確認の工程があるため、早く見つかれば修正できます。隠さずに、気づいた時点で報告してください。
最初に作る習慣
- 手順を自分の言葉で書く。教わった内容を、次の月に見返せる形で残します。
- 理由も聞く。「この勘定科目にする理由」まで確認すると、似た取引に応用できます。
- 質問はまとめて持っていく。分からない点、自分の考え、確認したいことの順に整理します。
- 迷った処理は自分で決めない。税の区分や計上する月に迷ったら、先輩や上司の判断を仰ぎます。
- 締め切りから逆算する。月の予定表に、提出物の期限と自分の作業を書き込みます。
- 情報の扱いに注意する。給与や取引先の情報は、社内でも見せる相手が限られます。
最初に知る制度
入社直後から毎月の作業に関わる制度は、次の三つです。細かい例外は後回しにして、まず何のためのルールかをつかみましょう。
一つ目はインボイス制度です。適格請求書は税務署長の登録を受けた事業者しか交付できず2、その保存が、仕入れの消費税を差し引く仕入税額控除の要件になります2。請求書を受け取ったら、まず登録番号の記載を確かめる作業が基本です。割合などの細かい話は月次決算の流れで説明しています。
二つ目は電子データの保存です。メールなどで受け取った請求書は、電子取引のデータとして保存します3。印刷して紙で残す方法の代わりにはなりません4。保存先のフォルダやシステムは会社ごとに決まっているので、入社時に確認してください。
三つ目は源泉所得税です。給与などを支払った月の翌月10日までに納めるのが原則です5。担当でなくても、毎月この日付に向けて動く人がいると知っておくと、周りの動きが読めるようになります。
入社時期で変わる山
3月決算の会社を例に、入社の時期と重なりやすい業務を並べました。未経験者が決算にどこまで関わるかは会社ごとに違います。最初の3か月の担当が狭いかどうかや残業の見込みも同じなので、面接で聞いておきましょう。
| 入社の時期 | 最初の3か月に重なりやすい業務 |
|---|---|
| 4月 | 前期の決算と、事業年度終了の日の翌日から2か月以内の申告6 |
| 7月 | 社会保険料の基準を決める算定基礎届は7月10日まで7。決定した月額は9月から適用7 |
| 10月 | 年末調整の準備と実施。通常は12月分の給与で行う8 |
| 1月 | 法定調書の提出9と、3月の期末に向けた準備 |
周りが忙しい時期に入社すると、質問の時間が取りにくいことがあります。そんなときは、質問を1日の中でまとめて聞く時間を先に相談しておくと、お互いの負担を減らせます。忙しい時期の様子を間近で見られるのも、早く全体をつかむ機会になります。
次にすること
応募の前なら、面接で次の3つを聞いておきましょう。入社後に教えてくれる人がいるか、手順書があるか、入社の時期の月末や決算の残業はどのくらいか。答えの具体さが、指導の体制を見る手がかりになります。
入社が決まったら、簿記3級で応募できる仕事も参考に仕訳と勘定科目の基本を見直し、入社先の決算月を調べておきましょう。1年の流れは経理の年間スケジュールで確かめられます。入社後は、最初の週に月の予定表を作り、担当する作業と期限を書き入れます。
3か月がたつころに、上司と振り返りの時間をもらってください。できるようになった作業、まだ確認が必要な作業、次に任せてもらいたい範囲の三つを話すと、次の目標がはっきりします。担当した業務はその都度書き留めておくと、将来の職務経歴書の材料になります。
出典
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job tag(職業情報提供サイト)「経理事務」 確認日 2026-10-31 ↩
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国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」 確認日 2026-10-31 ↩ ↩2
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e-Gov法令検索「電子帳簿保存法 第7条」 確認日 2026-10-31 ↩
-
国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和8年7月)」 確認日 2026-10-31 ↩
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国税庁「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」 確認日 2026-10-31 ↩
-
e-Gov法令検索「法人税法 第74条」 確認日 2026-10-31 ↩
-
日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」 確認日 2026-10-31 ↩ ↩2
-
国税庁「令和8年分 年末調整のしかた(手順などの説明)」 確認日 2026-10-31 ↩
-
国税庁「No.7400 法定調書の提出義務者」 確認日 2026-10-31 ↩